1章 糖鎖科学の概要

ここでは糖鎖の概要について説明します。

hazimeni

a) 糖鎖とは?
糖鎖とは文字通り、糖が鎖状に連なったものの事を指し生命活動に必要不可欠な物質の1つです。糖鎖はタンパク質や細胞の膜を構成している脂質の表面に結合し、その働きを左右しています。近年ではゲノム、プロテオームに続くグライコームプロジェクトが進められています。グライコームとはグライコとオームが合体してできた言葉であり、グライコは「糖鎖」、オームは「全体」を表します。つまりグライコームとは、ある生物の持つ全ての糖を網羅したものを言い、これには単独で存在している糖も、他の物質と複合体を形成している糖も含まれます。木下研究室では糖鎖の全体像の解明に努めており、このような糖鎖生物学の研究はグライコミクスと呼ばれます。

細胞膜ゼミ

以上の図のように、生体内において、糖鎖は細胞膜に存在しています。多くは細胞膜に存在するタンパク質から糖鎖がにょきっと生えているようになっています。その糖鎖にくっつく物質が①~⑤です。その他の物質を認識する糖鎖も存在します。また、細胞内にも糖鎖は存在しています。⑥のように、糖鎖だけで細胞内をただよっている糖鎖や、⑦のように細胞小器官にくっついている糖鎖も存在します。

b) 糖鎖の役割・重要性
1-1 血液型と糖鎖(Glycan motifs)で説明するように糖鎖の働きは赤血球で発揮しますが、それだけではなく、体中の細胞に存在し、ガンや免疫、ホルモンの働き等にも関与しています。生体内の糖鎖はアクセスカードリーダーのようなもので、細胞の表面からヒゲが生えたような状態で存在しています。カードを読み取らせるためには読み取らせるコードと、それを読み取る機械が必要です。この機械にあたるのが糖鎖です。コードにはどのようなものがあるのかというと、ウイルス、バクテリア、病原体(抗原)など様々なものがあります。近年では、このアクセスカードリーダーの役割を果たす糖鎖の研究が活発に進められているわけですが、糖鎖は非常に柔軟であり、環境に依存して構造が変化します。つまり、このアクセスカードリーダーは温度や湿度、時間によって変化する可能性があるのです。従って、一般に糖鎖の研究は遺伝子やタンパク質の研究と比較すると非常に困難とされます。

タンパク質は正しい条件でのみアクセスが許されます。
糖鎖はタンパク質の表面によくついていて、タンパク質を「修飾」しているといいます。そして糖修飾されたタンパク質の多くは細胞の表面をかざしています。実は、タンパク質の働きはこの糖鎖修飾によって変化することがわかってきたのです。つまり、タンパク質の機能は環境条件によって支配されている糖鎖の立体構造に影響されます。従って、糖鎖とそれらのタンパク質の機能の重要性が高まってきているのです!!

それでは、次は糖鎖と血液型との関係について勉強しよう!

1-1 血液型と糖鎖(Glycan motifs)

1-2 糖鎖研究の難しさ

1-3 糖鎖と環境

1-4 病気と創薬