1-3 環境と糖鎖

a) 植物由来の糖産物
植物は光合成によって、デンプンやセルロースといった糖鎖を産生します。
デンプンとセルロースはともにグルコースがたくさん繋がって構成されていますが、使われるグルコースの構造の違いによって区別されています。

セルロースはβ-グルコースがいくつも結合したもので、植物細胞の細胞壁に含まれており、植物の形状を維持するとともに、紙製品や木製品の原料となっています。
さらに、山羊などの家畜はセルロースをグルコースに分解することができるため、主要な栄養源としても使われています。

一方、デンプンはα-グルコースが多数結合したもので、セルロースを消化できないヒトでも消化することができます。

ヒトを含め地球上のすべての生物の代謝では、セルロースやデンプンなどの糖を消化して得たグルコースと水を、二酸化炭素に分解することでエネルギーを作り出しています。
そして二酸化炭素は植物の光合成によって再び固定され、糖鎖を産生するのです。

figure2.3

図 1.1 α グルコースと β グルコースの立体構造 (Glycome Informatics [1] 参照)

b) エネルギーとしての利用
糖は新たなエネルギー源として、エネルギー産業分野でも注目を浴びています。
植物の光合成によってつくられたデンプンやセルロースなどの糖鎖は地球上に最も豊富に蓄えられており、再生可能であるからです。

実際にトウモロコシやサトウキビなどの植物に含まれる糖を発酵させ、エタノールなどのバイオ燃料が作られています。
バイオ燃料を燃やした際は、石油と同様に二酸化炭素が発生しますが、これは植物が成長の過程で吸収した二酸化炭素であり、石油の燃焼と違って大気中の二酸化炭素が増えるわけではありません。
つまり、再生可能なバイオ燃料を使えば、地球温暖化といった世界的な気候変動を抑制することができるのです。

しかし、植物由来の大量の糖産物から、どのようにしてエネルギーを効率よく抽出するのかという問題が残っています。
それに唯一応えられる準備ができているのが、グライコサイエンスなのです。

植物研究者は細胞壁の構造や、構成成分がどのように作られているのかを解明し、どのように処理すると最も効果的に燃料へ変換できる糖を取り出せるかを理解する必要があります。

c) 素材としての利用
糖はまた素材としても利用され、糖鎖は石油製品の原料と同じくらい重要視され始めています。
例えば、食物のゲル化剤や、リグセルロースからなる木材などの原料は糖であり、プラスチック合成の代わりの原料になるともいわれています。
まだ問題点も多く、広く普及はされていませんが、多糖の設計やその化学構造、性状を操作するために、バイオ素材の開発が進み、目覚ましい発展が期待されているのです。

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